宗家 挨拶
- 日本武藝躰道三代宗家
祝嶺正献
21世紀の武道
平成23年1月23日。二代逝去より一年を経て、躰道創設、並びに日本躰道協会創立46周年記念式典にて躰道三代宗家継承のご挨拶を申し上げました。二代代行を勤めさせて頂きました平成17年11月からの五年間、更には、初代逝去からの九年間を振り返り、ご挨拶を申し上げます。
ものの価値が生み出されるまでの正当な道筋への評価、対価を尊重するフェアトレードという考え方があります。感情的なぶつかり合いや力の大小というよりは、正義や民主主義、社会貢献といったモチーフを「躰道」の二文字にこめた創始者の理念を受け継いで行く上で欠かせぬ視点です。21世紀の武道はこれまで以上に、「文」と「武」によりバランスよく繋がれるべき躰道の輪郭をはっきりさせてゆくことが大切な作業になるであろうと思われます。
躰道の輪郭をはっきりさせるということ、時代へ適応して行くということ、全体における多様性の意義を考えるということ、これらの観点から宗家の存在もある。そう捉えていただければより自然です。創成から最盛期、そして現在へと、その価値は指導、普及の現場を支える会員の手により積み重ねられて来ました。いつの時代もヒーローやヒロインといったチャンピオン達は、日々選手と向き合い、育成に励む指導関係者のご尽力は勿論のこと、競技大会開催の企画や運営に取り組むスタッフ、また、後援者の皆様の活動に支えられ輩出されてきました。どの存在も欠かすことの出来ない躰道の生命線です。
躰道創設、並びに日本躰道協会創立より46周年を迎え、今一度再確認すべきは、「躰道の価値は会員の支持と活動により創られる」という事実です。この先時代の流れに則した、宗家制度以外の仕組みが選ばれても不思議ではなく、私がこの立場でいることが必要ない時が来てもよいのです。宗家継承は躰道の根幹となるソフト面、実技・理念の伝承、指導や交流の場を途切れさせない為のほんの一部であるということを、この場をお借りし、改めてお伝えしたいと思います。
情報発信の機会は個人レベルに与えられ、今や活字も画像も絶え間なくウェブ上を行き来します。人々の表現の自由を規制することは益々難しくなり、モラルやマナーの問題に発展することが懸念されます。が、本流となる活動の実体は情報技術の駆使に左右されるものではありません。電脳に長けた人材、また、知的、体力的資質に恵まれた才能にはそれなりに。不思議と人が集まるリーダーには相応に・・と、個別の能力がさまざまなインデックスをもって評価される時代、躰道の価値を高めていただくのに充分な才能を一人一人が発揮し得る環境づくりが期待されます。そしてそれらの評価とは、力の大小や単なる数値によるものだけでなく、それぞれの立場における正当な期待への評価をもってなされるべきでありましょう。
創設より間もなく半世紀を迎える躰道ですが、これまで国内外に亘り多くの関係者の方々から賜りましたご支援、取り組みとその実績に敬意と感謝の意を表します。と同時に、若きリーダー達への更なるご助力を、関係する全ての皆様に心よりお願い申し上げる次第です。
日本武藝躰道三代宗家 祝嶺正献